物理雑談とリモート雑談のゆくえ

TL;DR

  • 本記事は「2つの仮説をもとにした雑談の考察」
  • 仮説: 物理雑談とリモート雑談は対立関係ではなく相互補完関係
  • 仮説: 物理ワークとは違う、リモートワークならではの雑談が生まれやすい仕組みが必要
  • まとめ: リモート雑談はデジタルであることのメリットを活かすようになっていきそう
  • Gather」良い

COVID-19の影響で仕事はリモートワークになり、そしてほぼ同時期に子供が産まれ子育てを始めた。COVID-19はしんどいけど、一方でリモートワークはめちゃくちゃありがたい。リモートじゃなかったら仕事と育児家事を両立するのは無理だったと思う。もう物理100%の以前の勤務スタイルには戻れない。もし戻ったら確実に生産性がめちゃくちゃ落ちる。

なので、今後もリモートワークで働きたい。技術の進歩であったり、会社での取り組みであったりでリモートワークでもかなり普通に働けている(みんなが一斉にリモートワークになったというのもすごく大きい)。ただし、「(仕事に関係する)雑談」に関しては物理のほうがいいという話をよく聞く。自分も半分は同意するんだけど、半分は違和感がある。違和感はだいたいこんな感じ。

  • 物理雑談 vs リモート雑談なんだっけ?
  • これまで物理の雑談だけだったので、リモート雑談の最適化ができてないだけでは?
  • リモートでの雑談にもいいところあるし、楽しいものもあるよ?

物理雑談とリモート雑談は補完関係

そこで、一つの仮説をたててみた。

仮説: 物理雑談とリモート雑談は対立関係ではなく、補完関係にある。

例えば「外食をする」と「食事のデリバリーを頼む」は利用者側にとっては対立関係ではなく補完関係にあると思う。前者はお店の雰囲気なども含めたトータルの美味しさ、後者は好きなものを手軽に食べれる美味しさ。他にも「音楽のライブ」と「音楽のサブスク」も補完関係にありそう。こんな感じで物理雑談とリモート雑談も補完関係にあるのではないかと。ただし、現状のリモート雑談は物理雑談を補完できてないので、対立関係のように捉えられてしまっていると。もしくはリモート雑談で物理雑談を再現しようとしてしまっている(でも再現できなくて、物理がいいねとなる)。

雑談のスコープ

仮説を掘り下げる前に、今回扱う雑談のスコープは次のようなものとしておく。

  • リモートワークが中心の会社での雑談とする
  • 今回扱う雑談は「仕事に関係する話を複数人の同僚でカジュアルに行うもので、ミーティングとは違いインフォーマルなもの」
    • 仕事に関係ない趣味やプライベートに関する雑談はスコープ外
  • この雑談によって得たいものは「参加者の情報同期とコラボレーション」
  • 物理雑談は実際に対面でする雑談、リモート雑談はインターネットを使ってする雑談
    • リモート雑談も同期的に行うものに限定する。例えばSlackなどのチャットツールによる雑談は非同期なので今回は除外する
    • ZoomやGoogle Meetでの雑談を想定している

雑談の特性とマルバツ表

仮説の通り補完関係にあるとするなら、次のことを思考してみるのがよさそうだ。

  • 物理雑談の強いところ弱いところを把握する
  • リモート雑談でその弱いところを補完して、強いところは物理に任せる仕組みを考える

この前提の上で、雑談の特性とマルバツ表を考えてみた。

特性 物理雑談 リモート雑談(現状)
参加可能な人数
途中参加のしやすさ
雑談しているのをすぐに発見できるか
雑談の内容を後から知れるか
五感を含めた情報量や熱量の多さ
開催の手軽さ

※これは5分ぐらいで考えた粗いものである。他にも特性はありそうだけど、そこはあまり精緻化せずこれでいってみる。あくまで仮説の方向性がありなのかを思考実験するためのものであるため。

リモート雑談で物理雑談の何を補完するか

このマルバツ表によるとリモート雑談で物理雑談を補完するには、「雑談をすぐに発見できるか」と「雑談の内容を後から知れるか」について最適化が必要である。これはリモート雑談がデジタルであることのメリットを活かせそうである。とりあえず思いついたのは次のような方法だ。

  • どこかでリモート雑談が開始されると、Slackのチャンネルに通知され、発見しやすくする
    • ZoomやMeetのURLも一緒にあればすぐに参加できそう
    • 常になのか、任意なのかは論点ありそう
  • リモート雑談の録画・文字起こし・要約・カテゴリが配信され、検索可能となっている
    • 雑談内容が検索可能になることで、なんとなく不安感を持つ人もいるかも知れない
    • それと、技術的難易度が高そうか?

一方で、すでに物理雑談で◯や◎となっているものは、リモート雑談で最適化は必須ではなさそう(してもよい)。また、「開催の手軽さ」は物理雑談✕、リモート雑談◎なのでこれは維持したほうがよさそう。


これまでは物理雑談とリモート雑談が相互補完にあるという仮説を元に色々考えてきたが、次は視点を少し変えてみる。

リモートワークで雑談が生まれやすい仕組みが必要

実際のオフィスの場合、「会話が生まれやすいような導線や部屋などを意識したレイアウト設計をする」というのを聞いたことがある。同じように物理ワークとは違う、リモートワークならではの雑談が生まれやすい仕組みを設計する必要があると考えてみる。ではどんな仕組みを設計すればよいのか?物理(オフィス)ワークからリモートワークへ変化したことによる影響を元に考えてみることにする。今思いつくのは次の2点だ。

  • 相手の仕事の雰囲気が見えない
  • スキマ時間を効率的に使ってしまう

相手の仕事の雰囲気が見えない

リモートワークになったことで、雑談のハードルがあがったという声をよく聞く。これは「相手の仕事の雰囲気が見えないので話しかけて良いのかどうか分からない」というものだろう。相手が集中して作業をしてるのか、それとも話しかけてもよさそうな感じなのか。もしくは他の誰かと話しているのか、離席しているのかとか。

これは物理ワークだったときは相手が今どういう雰囲気で仕事をしているかは見ればなんとなくわかったので、それに応じて話しかけるかどうかを判断できた。リモートワークでもとりあえずSlackなどで話しかけてみて、レスがあれば雑談する。レスがなかったら集中してるんだなと思って諦める。というのをすることもできる。できるが、僕はレスがないとちょっとさみしいなと感じてしまうので苦手である。

スキマ時間を効率的に使ってしまう

ミーティングとミーティングの合間、タスクが切りよく終わった瞬間など、物理ワークならこういう瞬間は絶好の雑談タイミングである。しかしリモートワークだとそのタイミングに細かい雑務を片付けたり、Slackを巡回したり、外の空気を吸いに行くなどをしがちである。雑談を誰かに振るというのをしない。これは前述の「相手の仕事の雰囲気が見えない」というのもあるだろうし、リモートワークだと何故か(?)スキマ時間を効率に使わねばと思ってしまう。理由はうまく言語化できないが。

見える化 and/or 定期開催

これら2つの問題を解決する仕組みとしては、例えば次のような方法がありそうだ。

  • 仕事の雰囲気を見える化する
    • Slackのステータスを都度変更するというので可能そうだけど、もうちょっといい方法がほしいように思う
  • 雑談を定期開催にする
    • 毎週や毎日の決まった時間に雑談を開催する
    • これは割と行っているところも多そうで、前職では帰りの会というのを実施していた

リモートワークで雑談が生まれやすい仕組みは他にも色々必要かもしれない。が、そういう仕組が必要そうというのは方向性としては正しそうな気がする。

「Gather」良い

という感じで、雑談について頭にあったものを吐き出してみた。ちょうど会社(Ubie Discovery)で物理とリモートでの雑談*1について話題になっていたのもあるため。で、これを書いてる間に社内ではGatherというサービスがまたたく間(まじで1, 2日で)に浸透して、Gatherでするリモート雑談めっちゃ良いじゃんとなった。

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Gatherはサービスの作り込みが結構されているのもあるが、前述した物理雑談を補う点や、リモートワークで雑談が生まれやすくなる仕組みが作られている。

  • 雑談をすぐに発見できるか?
    • 人が会話している、集まっている様子が可視化されているのですぐに発見できる
    • ただし、Gatherの画面を見ていないと雑談には気づけ無い
      • これはまあ物理雑談もそういうものだと思うので、現状でも十分だと思う
  • 相手の仕事の雰囲気が見えない
    • 静かにするモード(Quiet Mode)であったり、PCデスクの前に座るなどで集中状態を可視化できる
    • 逆に談話スペースにいることで雑談可能を示せる

ちなみに通常のミーティングもGatherで行われつつあるので、他チームのミーティングにふらっと参加してコラボするというのも発生している。他にも自分のデスクトップ画面を共有して、作業風景を垂れ流しながら仕事をしてる人もいたりする。要はデジタルであることのメリットを最大限活用して、物理では難しかったコミュニケーションの体験を作れるのである。だからといって、Gatherによるリモート雑談だけでよくて物理雑談は不要とはならなさそうだ。あくまでも相互補完という感じがしている。

一方で、Gather単体では解決が無理そうなものもある。

  • 雑談の内容を後から知れるか?
  • スキマ時間を効率的に使ってしまう
    • 個人的にはこれは意識的に雑談時間を設けたり、定期開催するので良いかなと思っている

リモートワーク中心になり、(仕事に関係する)雑談に悩みを持っているなら、Gatherは試してみるのはおすすめである。

ゆくえ

というわけで、穴だらけの論理展開だったが、これまでの考えをまとめるとリモートワーク下における物理雑談とリモート雑談のゆくえは次のようになると思った。

  • 物理雑談
    • 熱量や雰囲気といった言語化しづらいものも含めた体験を必要とするときに行う
    • 例えば期初やプロジェクト発足時のキックオフだったりオフサイトみたいなもの
    • リモートワーク中心の会社では手軽な開催はやや難しいので、頻度や内容の工夫もあるとよさそう
  • リモート雑談
    • デジタルで行うことのメリットを活かし、物理では実現が難しい体験を模索して、物理と相互補完する
    • 例えばちょっとしたアイデアについて話したい、隣のチームの雑談やミーティングにふらっと参加するなど
    • 手軽に開催できるので、思い立ったらすぐに開始するぐらい俊敏にやる

このあたりの話は論文があったり、リモートワークを何年もやってる会社が知見をまとめていたりしそう。誰かがいい感じの記事を書いてくれるのに期待。


2022年は雑談をもっと雑にやっていきたい。

丸山@h13i32maru

*1:社内では「ただ話す」と呼ばれていて、少しニュアンスは違うが