Ubie Discoveryに入社して感じた「これまでとの違い」

@h13i32maru

Ubie Discoveryに入社して半年がたった。半年働いてみて、これまで働いてきた会社と比べて違うなと感じたことが結構ある。それらを忘れないように残しておこうと思う。ちなみに個人的に感じたことや解釈なので、ズレていることがあるかもしれないのであくまでも主観ということで。

人ではなく仕組みやコトを管理

Ubie Discoveryではマネージャーと呼ばれる人はいないし部長などの役職もない。じゃあどうやって組織を運営しているかというと、そもそも「人や人の行動を管理(マネージ)する」という管理スタイルではない。Ubie Discoveryで管理しているものは「目標・目標達成の方法・様々な型(プロセスやフレームワークのこと)」などの仕組みやコトである。

そして管理する対象が人ではないため、上司部下という関係は不要になる。更に面白いのが、仕組みやコトの管理は全社員がそれらを管理するというのを(理論上は)行える。これによって全社員に当事者意識や全社目線というものが生まれやすくなっていると思う。これは人が人を管理するというスタイルでは役職の階層構造が生まれるのでどうしても難しいことであり、仕組みやコトを管理するスタイルのメリットだと思う。

一方で、人が人を管理することをしないので、「モチベーション維持」「成長やキャリアのサポート」などの個人的な事情については手薄になりがちである。そのためUbie Discoveryではそのあたりについて自分でなんとかできるタフさが求められるように思う。もちろん、相談にいけばみんな快くサポートしてくれる。

組織運営に組み込まれた権限委譲

これまで働いてきた会社でも権限移譲というのはあった。しかし、「どのような権限を・どれくらい移譲するか」というのは移譲する側によって濃淡があり、組織全体で統一されていなかったり、不透明だったりする。

Ubie Discoveryでは、どのような権限をどのようなプロセスを経て移譲していくかが組織運営に明確に言語化されて組み込まれている。これは共同代表の二人から各チームへの権限移譲でも、各チームからさらに小さなチームへの権限移譲でも同じである。つまり権限移譲する側によって濃淡がなく、社内のどこでも統一された方法で運営される。このように権限委譲が浸透しているため、トップやマネージャーが全て意思決定するよりも、現場で課題に向き合ってる人々がスピード、質、多様な視点を持って意思決定できる。

さらに権限移譲は人に移譲するのではなく、全社目標を階層構造に分解したときの、その目標(正確にはその目標を達成する役割)ごとに移譲される。この役割(≠役職)というのも統一的に決まっている。例えばチームに人をアサインする役割、親チームとの連携を行う役割、議論をファシリテートする役割などである。これにより権限と人の結びつきが緩和されて、流動性が生まれやすくなっている。

例えば一般的に「部長」という役職を一旦人に与えてしまうと、さまざまな理由によりその人から部長という役職を剥がすことは難しい。しかしUbie Discoveryでは先月まではリードの役割にアサインされていた人が、次は全然別の役割をやるといのは日常的に起きている。とはいえ、これは仕組みだけの話だけではなく、各自のマインドによるところも大きいと感じている。余談だが、社内では「willがある仕事をやるのが一番パフォーマンスが出る」という原則のもと異動がすごく推奨されている。

そして、実は権限移譲だけでなく組織運営自体が明確に言語化されている。というのもUbie Discoveryではホラクラシーという組織運営のフレームワークを採用しているからだ。ホラクラシーとはティール組織の具体的な実装である。ここで書いた権限移譲や役割、それを決めるプロセスなどはすべてホラクラシーにより規定されている。

ここまで組織運営が明文化されて、実際にそのとおり運営されている組織というのはこれまで全く経験したことがなかったので非常に新鮮で良いなと思っている。一方でその組織運営になれるには時間と学習コストを要する。まだその仕組に慣れていないので「こういうときはどうするんだっけ?」というのがちょいちょい発生する。

徹底した目標設定と運用

「仕組みやコトの管理」「権限委譲」が組織の根幹にあるため、そのままでは各自が良いと思う方向にバラバラに進んでいき、組織力を発揮しづらくなってしまう。そこでUbie Discoveryでは目標設定と運用にめちゃくちゃ労力を割いている。

まず目標設定についてだが、共同代表の二人がトップダウンの目標を準備する。それと同時に各チームもボトムアップの目標を準備する。そしてこれらの目標を共同代表と各チームの代表でアラインして全社目標とチーム目標を作っていく。この目標設定で面白いのが目標だけではなく、それを達成するための大枠の方法についてもセットで決めていくことである。社内ではそれを「目標の登り方」と表現しているが、いわゆる戦略のようなものだと思っている。このようにして全社目標とチーム目標を一旦決める。ちなみに個人目標は決めていない。

一旦と表現したのはこの目標が発表された翌週にUbie Discoveryの全メンバーでそれらの目標について議論したり、不明点を質問したりというのを一日かけて行い、最後の調整をするからである。この目標の発表と最後の議論がすごい熱量で行われる。正直僕はこれまで働いてきた中で、目標の発表や議論についてここまで熱量高く行われるというのを体験したことなかった。そしてなんと、この目標設定は四半期ごとに行われる。ものすごい労力が必要だけど、事業環境はすごいスピードで変わっていくので少なくとも四半期ごとにする必要があるのだと思う。

目標は設定するだけではなく、実際に運用してこそである。そこで、Ubie Discoveryでは毎週のWin Sessionというミーティングで各チームから目標について進捗や良かった点、問題点を共有している。これが毎回大いに盛り上がる。また月に一回、共同代表とチームが目標についてリファインしている。同じく月に一回、共同代表からUbie Discoveryの全メンバーに対して売上やプロダクトの導入数、今月のハイライトなどの共有がある。もちろん日々の開発中にもこれらの目標は頻繁に参照される。そしてこのような運用を通して、目標は期中にも変わっていくことがある。というのもこれは事業環境の変化、不確実性が減ったり、新たに学習したことなどにより、より良い目標が見えてくるからだ。

ここまで目標設定と運用に力を入れており、社員全員がその目標に対してすごい熱量を持っていて、それを起点にすべての物事が動いているというのはこれまで経験したことがなかった。なので、最初はめちゃくちゃビックリした。一方で、この目標とその登り方がだいぶコンテキストが高い内容になっている。これは四半期もしくはそれ以上のスピードで目標や登り方が変わっていくので、その字面だけを見てもだめでちゃんと各事業の状況を理解できている必要がある。なので入社当初は日本語は読めるけど内容が全然わからんという感じだったので、同僚に解説を何度もお願いしたりした。というか今でも自分が所属するチーム以外の目標や登り方は完全に理解できているかというと怪しい。

ちなみにUbie Discoveryでは目標のフレームワークとしてOKRを採用している。

人事評価をしない意思決定

Ubie Discoveryでは人事評価をしないということになっている。人事評価が無いのではなく、しないという意思決定をしているのだ。なぜそのような意思決定をしているかというと、「 事業の不確実性が高い状況では各々の事業貢献を正確に把握できないため」「自分をよく見せようという政治的な動きを排除するため」「人事評価にはコストがかかるので、そこにコストをかけるより事業を進めるほうがRoIがよいため」などの理由がある。詳しくはUbie Discoveryのメンバーが書いた以下の記事を参照してほしい。報酬設計などについても書かれている。

この人事評価が無いというのは個人的には非常に快適である。これまで人事評価をする・されるの両方を経験しているが、時間も体力も精神力もかなりコストがかかる。そしてその上で正解が無い。この難しい問題から開放されて、事業やプロダクトに集中できるというのはかなりのメリットである。

人事評価はなくても事業をすすめる上での各自へのフィードバックというものは存在している。フィードバックを欲しいと思った人がフィードバックをもらいたいと思う人を指名して、フィードバックを書いてもらうというものだ。これはいつでも誰でも実行することができる。僕も何度か指名してフィードバックをもらったことがある。

フィードバックをもらうのは気軽な一方で、フィードバックを書くときは僕は苦労している。僕は前職でマネージャーをしていたときがあるので人事評価の際はメンバーにフィードバックを書くこともやっていたのだけど、Ubieでフィードバックを書くときはどうしてもその時と比べると質が落ちているように感じる。

マネージャーだったときはしっかりメンバーの業務を見たり、1on1で話を聞いたりなどしていたため、それに基づいてフィードバックを書けていたと思う。また人事評価もあったのでいわゆるグレードと呼ばれるようなものがあり、そこに「このグレードならこういう成果や能力を持っている」と記載があるため、それと比較してフィードバックをすることができる。

Ubieではそういうマネージャー業やグレードというものは一切ないのでフィードバックの質が落ちるのかなと思っている。ただ、じゃあコストをかけようというのは「人事評価をしない」という意思決定に対して本末転倒である。この点についてはなにかいい方法がないかなとたまに考えたりしているが、今の所あまりよい仮説をたてられていない。


という感じで割と独特な組織なので、人によっては好き嫌いや合う合わないがある。そのため「採用」についてもこれまでとの違いを感じることが多い。他にも「日々の開発」「エンジニアリング」などについても違いを感じたものがあるのだけど、それらは今度書くことにする。

もしこれを読んでUbie Discoveryに興味を持った人は以下を参照してほしい。

それと、Ubie Discoveryに転職〜入社1ヶ月までの話も書いてるので興味があれば参照してほしい。