転職の意思決定(クックパッド → Ubie)

こんにちは丸山@h13i32maruです。タイトルの通り、2020年末に転職の意思決定をしました。現職のクックパッドには大変お世話になりました。次はUbie(ユビー)という医療系ベンチャーに行きます。今は有給消化中で入社は3月1日からです。

この転職の意思決定をするにあたり「事業ドメイン」「組織」「自分の成長」「報酬」の視点で色々と検討しました。そこで未来の自分に検討したことを残しておこうと思います。今の正直な気持ちを書いているので、Ubieに限らず転職しようか迷ってる人にとって何か参考になれば幸いです。

ちなみに今回の転職は以下のような経緯によるものです。

  • 転職活動をしていたわけではなく、中の人からお誘いいただき入社に至ったため、他に検討していた会社はありません
  • 転職するかどうかは最後の最後まで迷っており、オファー後に色々考えて転職するかどうかの意思決定をしました

目次

感情に流されない

まずはじめに意思決定するための注意点として「感情に流されない」というのを意識しました。

僕はソフトウェアエンジニアですが、誰にも負けない凄いスキルを持ってるわけではありません。コンピュータサイエンスに精通しているわけでもなく、なにか大きな実績があるわけでもなく、エンジニアリング以外の高い能力があるわけでもありません。なにかあるとすれば、プロダクト開発が好きだということくらいです*1

そんなエンジニアでかつ割と保守的な性格なので、転職というのはドキドキします。合わなかったらどうしようとか、転職する(しない)を後悔したらどうしようとか色々不安になってしまいます。結果、そういう感情面で意思決定すると現状維持や楽な方に流れがちです。しかも現職(クックパッド)は大変良い会社で働きやすく、料理というドメインも好きで、とても良いメンバーがいます。さらに僕はもうすぐ35歳になりますし、子供も生まれたばかりで、20代の頃とは違います。さらにさらに世間はコロナで大変な時期です。

そこで、このオファーを受けるべきかどうか論点を整理して、なるべく感情に流されないように自問自答しました*2。なので今回はエモい話や感動的な話はほとんどありません。

事業ドメイン

組織・チームメンバー・使っている技術・給与などが一定の水準以上なら、事業ドメイン・プロダクトが僕の転職の意思決定にとって一番重要です。なぜなら自分が仕事(サービス開発)で一番パフォーマンスを出せる状態というのは、いかにその事業ドメインが自分にマッチするかにかかっているからです。じゃあどういうものが僕自身に合うかというと「自分が使って、自分の人生や生活が良くなるもの」というのがここ数年大事にしてきたことです。儲かる・社会貢献できる・ユーザ数が多い・最先端などはあまり重視していません。結果としてそれらが達成されるのはもちろん嬉しいことではあります。

なのでクックパッドというのは僕(自分で料理を試行錯誤するのが好き)にとっては現時点で最高にマッチする会社です。とはいえ6年働いてきたので、やりたいことは結構挑戦させてもらいました。特に2018年から2年間はかなり挑戦しました。2020年は燃え尽きたという感覚もあり、少しクールダウンしながら次に社内で挑戦することを探している状態でした。通常業務をしながら2020年11月には次の挑戦のPoCを作ったりしていました。

今でも「自分が使って、自分の人生や生活が良くなるもの」というのはすごく大事です。しかし私生活の変化、特に今年子供が生まれたのがきっかけで「自分と家族の人生や生活がよくなるもの」への気持ちが強くなってきました。なので次にもし転職するなら医療系(か教育系)がいいなと思っていました。子供が小さいうちは病院にお世話になることも多いでしょうし、妻が看護師であり、僕自身もちょいちょい病院に行くことがあるためです。

そう考えながら、Ubieメンバーとのカジュアル面談で医療のことや市場について話を聞かせてもらったら知らないことばかりでした。なにより医療自体は僕にとって未知すぎて単純にドメインとして面白そうだなと感じました。それとUbieのミッション・プロダクト・ビジネスモデルについてもすごく明瞭で良いなと思いました。シンプルでわかりやすいことは正義です。そういうわけでUbieの医療ドメインやプロダクトは自分にマッチするかもと考えるようになりました。

とはいえ「自分と家族の人生や生活がよくなる」という点で仕事をしたことはありませんし、これまで大事にしてきたことを変えるのは不安があります。それに実務面ではドッグフーディングがかなり難しくなります(些細な話だけど僕の開発スタイルにとってすごく重要)。けど、これは新しい挑戦と考えることもできます。

  • 医療ドメインとUbieの事業は僕と家族の人生や生活をよくするか?
  • 自分が仕事で大事にしてきたことを変えて、新たなことに挑戦すべきか?
  • 医療ドメインで自分のパフォーマンスを出せるか?
  • クックパッドでの次の挑戦は未達のままでも後悔しないか?

組織

Ubieは評価なし・役職なしという面白い取り組みをしています。これは事業や会社の成長に全ての時間を使うためというのが主な理由だと理解しています。そのため組織運営は独特なものがあります。現時点で僕が理解しているのは例えばこういうところです。

  • 評価がないので役職はなく、役割を重視したフラット構造
  • 意思決定は各役割を持った人が行う
  • 全員が最大限能力を発揮していると信頼している
  • 各自の成長に関しては自力でなんとかできる人しか雇わない
  • 個々人の成長ではなく会社の成長が各自の報酬として跳ね返ってくる
  • 会社の成長が報酬として返ってくるので、採用は全員で行う

※このあたりはまだ入社前なので、理解が間違ってるかもしれないけど

具体的なフレームワークとしてはティール組織の実装系である「ホラクラシー」というものを採用しています。ティール組織は以前に読んでいて面白い*3と思っていたのでこの組織運営には興味がわきました。

次に組織全体ではなく個人にもフォーカスしてみます。まずUbieに誘ってくれた菊田さんがすごく楽しそうに仕事をしているのを観測しています。菊田さんとはクックパッドで一緒に働いたことがあり、そのときも楽しそうに仕事していましたが、Ubieではそれ以上に楽しそうに見えます。彼が楽しく仕事をしているというのは彼を知っている人なら、その会社にかなり良い印象を持つとおもいます。それと共同代表二人のバランスがすごくよく見えました。一方は強いリーダーシップ、一方は安定・堅実という感じでした。ただ共同代表二人とはまだ一緒に働いたことはなくて、面談等で話をさせてもらっただけなので、実際は違うのかもしれないですが。

  • ピラミッド型組織ではない、全く新しい組織を楽しめるか?
  • 苦手な採用で貢献できるか?

自分の成長

クックパッドは長く働いていることもあり、割とコンフォートゾーンでした。なので最近は自分の成長が鈍化している感覚がありました。2020年の後半はそれまで数年やっていたPdMやマネージャー職をやめて、エンジニア(Android)に戻ったのですが、20代のときと比べると物足らなさがありました。これにはいくつか理由はあると思うのですが、一番はエンジニア業務がしっかり分業化されているところにあると考えています。分業自体は大きな組織ではよくあることだと思うし、それが悪いとは思わないです。むしろ全体最適では必要なんだろうなと思います。しかし僕のようにしばらくエンジニアブランクがある状態での復帰が分業体制というのはちょっとミスマッチなのかなと思います。それとこれまでの経験からディレクション業務や人のマネジメントというのも期待されます。そんなわけで、この状態で数年過ごしたときに自分のエンジニアとしての成長や市場価値に対する不安がありました。一方でUbieのソフトウェアエンジニアは割と広い範囲を担当しているようです。

※クックパッドでも僕が所属していたレシピ事業以外では状況が違ったり、レシピ事業の中でも色々なことをやる動き方はできるとは思います。

自分の成長という視点において、Ubieでの面接も非常に有益な情報を得られました。面接は計3回ありスタンス面接・技術面接の各ディスカッションが大変楽しく&めちゃくちゃ疲れました。ヘトヘトになって帰った記憶があります(最終面接は雰囲気が違ったので割愛)。僕もクックパッドで面接官をしていますが、少なくとも僕個人はここまでの面接はできてなかったです。なのでUbieの面接官は非常に能力の高い人たちだなと思いました。そして多分他のメンバーも全員がこのレベルなんだろうなと。それもそのはずで、市場の不確実性をこの短期間で乗り越えてきた(乗り越えている)人たちなので当然といえば当然です。そんなメンバーと一緒に働くことができるのかと。というか、受かると思ってなかったのでよく受かったよなという感想があります。それと僕にとってこの面接はアトラクトとしてすごく効果的でした。

  • コンフォートゾーンを抜けて、技術的に未知なラーニングゾーンにコロナや育児をしながら挑戦できるか?
  • Ubieで働くことは自分が成長し、自分の市場価値を大きくあげるか?

報酬

ベンチャーは給与が低いけどストックオプションでカバーするというのがよく見られる報酬設計なのだと思います。しかしUbieの場合は給与水準も普通のウェブ系企業と比べても遜色ないレベルであり、さらにストックオプションもあるという設計になっています。これは会社が継続し、上場すれば手堅さと夢の両方がかなう感じです。

ただ家賃補助や交通費の福利厚生はやはりまだ弱いところもあり、そこは現職のほうがよかったです。けどそこはリモート勤務をしっかり使える会社なのであまりマイナスにはならなさそうです。このリモート勤務は子供がうまれてまもないということもあり、非常に魅力的です。一方でリモートで新しい会社にうまくなじめるかは不安はありますが。

組織のところでも書きましたが、評価がないので給与が定期的に上がっていくという保証は全然ありません。評価がある会社でも保証はありませんが、上がりやすい力学はあると思います。給与が上がるかどうか(とストックオプション)は会社の成長と一蓮托生です。

  • 今後数年間、もし給与が上がらないとして、生活費・養育費・貯蓄には十分か?
  • 数年以内に上場し、十分な評価額となるか?

意思決定

以上で各視点の問のリストアップは終わりです。あとは自問自答するだけです。

医療ドメインとUbieの事業は僕と家族の人生や生活をよくするか?

Yes. 頻度は少ないかもしれないがクリティカルである。

自分が仕事で大事にしてきたことを変えて、新たなことに挑戦できるか?

Yes. 不安はあるけどUbieでなら挑戦する価値がある

医療ドメインで自分のパフォーマンスを出せるか?

正直わからない。けどUbieには医療ドメイン未経験のエンジニアもたくさんいるらしいので、僕もいけるはず。

クックパッドでの次の挑戦は未達のままでも後悔しないか?

Yes. 心残りではあるが、後悔はしないだろう。色々やりきった。

ピラミッド型組織ではない、全く新しい組織を楽しめるか?

Yes. 楽しそうだし、今後のスタンダードになる可能性もある。

苦手な採用で貢献できるか?

正直わからない。でも僕なりの方法で貢献すればなんとかなるだろう。

コンフォートゾーンを抜けて、技術的に未知なラーニングゾーンにコロナや育児をしながら挑戦すべきか?

Yes. 35歳ということもあり、挑戦するなら早いほうが良い。妻の理解も得られた。

Ubieで働くことは自分が成長し、自分の市場価値を大きくあげるか?

正直わからない。けど環境としては最高。あとは自分次第。

今後数年間、もし給与が上がらないとして、生活費・養育費・貯蓄には十分か?

Yes. 東京都最低生計費試算調査結果をもとに数年分のを試算してみたところ、いけそうと判断。

数年以内に十分な評価額で上場するか?

Yes. これは完全に素人感覚なので正直当てにならないだろうけど、可能性は高そうに感じた。




というわけで問はほぼYesでした。事業ドメイン、組織、自分の成長、報酬どれも魅力的です。誘ってもらったときは受かると思っていなかったので、不意に手に入ったこのチャンス、活かすべきだなってことでUbieに入社することにしました。正直なところ期待と不安が入り混じった気持ちではありすが、そういう感情を棚に上げるための論点整理だったので目論見通りではあります。

次は実際に働いてみてどうだったかを書こうと思います。それまで頑張って生き残ろう。ちなみに一足はやくオンボードに参加しましたが、想像の10倍よかったです。この会社を成長させてきた現メンバーの人たち、やっぱり超すごいんだなぁと思いました。

もしUbieに興味を持たれた方がいらっしゃればお気軽にDMください。中の人につなぎます(僕はまだ入社前なので話せることはそんなにない😇)


補足1

補足2

*1:仕事でいくつかのプロダクト開発、個人ではESDoc, Jasper, Trickleなどを開発してきました

*2:恋物語で貝木泥舟が自問自答したように

*3:抽象度が高くて1/3ぐらいしか理解できなかったけど